Soliloquy box

松葉が纏まりのない文章を溢すだけの箱

Short Sentence6⃣

 十字路で迷子になった夜、手を繋いで君と夢の中に紛れ込む。小さな小さな声でハミングして、冷めた空気を暖めた。酩酊したみたいにふらりふらりと白線を踏み外して、僕らの人生をなぞっていく。君が居ればそれでいいよって、この手の温もりだけは嘘じゃなかったのに。仕立て上げられた現実は僕らにだけ残酷だった。君の最寄り駅、寂れたインターネットカフェの蛍光灯と明かした夜のこと、今でも思い出すよ。ブルーライトとアルコールが寄り添ってくれたあの夜は、夢か現か、もうわからなくなってしまった。瞑った瞼を開く。あの夜も、君の掌も、もう何処にも無い。手放したのは僕だったのに。君と生きたあの夢のような時間に、僕だけが今も、酔い続けている。

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