2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧
遠く遠くの海で水面が揺れている。そんな幻想に浸りながら、眠りに就くのが好きだった。夢を操れるわけではないけれど、そんな日の夢は必ずそれの続きだった。薄く晴れた昼間の穏やかな浅瀬で、君は水面を爪先で弾きながら笑うのだ。 ☀ 「また来たの」 夢を…
「誰かをそっと見守っていられるような、月とか、星とか……そういう存在になりたいんです」 君はそう言って僕の胸を刺していった。夏の暑さを凌ぐために入った、家電量販店でのことだった。 刃のように鋭い三日月に心を刺されてしまったから、いっそ星に成れ…
儘ならない生活の中で、自分を痛めつけること。それだけが上手くなって、自己憐憫に酔ったこころが愛されたいと喚いている。きみだけが好きだよ、なんて囁いて貴方は微笑むけれど、それは何回目の嘘なのだろう。そして、そんな使い古しのありふれた言葉を、…
こころに詰め込んだ希死念慮で咽び泣いても、外側からはわからない。綺麗だねって愛でてくれたきみも、内側を見て距離を取る。逃げてゆく。僕だって逃げてしまいたい。こんなもの、って投げ捨ててしまえたなら、これほどつらくなかったのだろうか。苦しくな…