Soliloquy box

松葉が纏まりのない文章を溢すだけの箱

Short Sentence1⃣2⃣

鳴り止まない警鐘 急所に突き刺さって 溢れ出た赤は 逃げ場を求めて落ちていく 大丈夫 すぐに僕は空っぽになるから 乾いた燃え殻になるまでは 傍に居てくれないか 揺れる視界が すべてを歪曲させて 凛とした君の姿さえも 捻じれていく けれどどうしたって わ…

海路の果て

遠く遠くの海で水面が揺れている。そんな幻想に浸りながら、眠りに就くのが好きだった。夢を操れるわけではないけれど、そんな日の夢は必ずそれの続きだった。薄く晴れた昼間の穏やかな浅瀬で、君は水面を爪先で弾きながら笑うのだ。 ☀ 「また来たの」 夢を…

Short Sentence1⃣1⃣

「誰かをそっと見守っていられるような、月とか、星とか……そういう存在になりたいんです」 君はそう言って僕の胸を刺していった。夏の暑さを凌ぐために入った、家電量販店でのことだった。 刃のように鋭い三日月に心を刺されてしまったから、いっそ星に成れ…

Short Sentence1⃣0⃣

儘ならない生活の中で、自分を痛めつけること。それだけが上手くなって、自己憐憫に酔ったこころが愛されたいと喚いている。きみだけが好きだよ、なんて囁いて貴方は微笑むけれど、それは何回目の嘘なのだろう。そして、そんな使い古しのありふれた言葉を、…

Short Sentence9⃣

こころに詰め込んだ希死念慮で咽び泣いても、外側からはわからない。綺麗だねって愛でてくれたきみも、内側を見て距離を取る。逃げてゆく。僕だって逃げてしまいたい。こんなもの、って投げ捨ててしまえたなら、これほどつらくなかったのだろうか。苦しくな…

Short Sentence8⃣

月が満ちた。まだ、きみは戻らない。 淡い光の下で撫でた頬の丸みも、少し高めの平熱がくれた温もりも、掌をすり抜ける風のように、闇へ溶けて消えてしまった。きみが与えてくれたすべてが、きみがいない間に重ねた夜へ溶けて、その残滓すら、跡形もなく消え…

Short Sentence7⃣

最終列車は遠く闇に呑まれて、置き去りのこころがひとつ、哭いていた。白々しい蛍光灯の光は責めるようにそれを見下ろして、生温い風は憐憫の情を持って頬を撫でてゆく。幾度となく刃物で切り裂いた腕は、ぼろぼろのこころを具現化したような醜悪を纏ってじ…

Short Sentence6⃣

十字路で迷子になった夜、手を繋いで君と夢の中に紛れ込む。小さな小さな声でハミングして、冷めた空気を暖めた。酩酊したみたいにふらりふらりと白線を踏み外して、僕らの人生をなぞっていく。君が居ればそれでいいよって、この手の温もりだけは嘘じゃなか…

Short Sentence5⃣

何度目かの"自分らしさ"を見失った夜。投げた肢体はシーツの上にちらばって、遠く伸びた指先は霞み、ぼやけていた。雨は止んでしまって、鬱気は更ける闇夜の中へ溶けていく。鈍感になる事だけが得意だった。けれどそれは、鋭敏なことときっと同義で。知って…

Short Sentence4⃣

踵を上げて背伸びをして、それでも空を飛べやしないから、わたし、鳥が好き。先行く腕を引くだけで、君はいつも立ち止まって振り返って、微笑んでくれた。それからどちらかの部屋に転がり込むのがお決まりだった。最初にキスをせがむのはいつだって君で。そ…

Short Sentence3⃣

脳が揺れる。実際は揺れてなんかいないのに揺れている。視界がぶれて滲んでいく。鮮明になんて見えたこと無いのに、世界から切り離されたような気がして、安堵、それから焦燥。僕も君も"ほんとうのこと"なんて何も知らないんだ、だってそんなもの何処にも無…

Short Sentence2⃣

毎夜、目が覚める。閉め切ったカーテンの向こうで、世界はまだ冷め切った闇に包まれている。ぼやけた意識の中、感情はその闇へ呑まれたかのように暗く重く横たわっていて、憂いだか何だかが鬱蒼と茂っている。暗澹が腰を据えて、虎視眈々、心の隙を狙ってい…

Short Sentence.

もう届かないことを歓びながら、届いてくれれば、なんて思っている、夜。君は今、何をしているのだろう、星に問うたって教えてはくれないけれど、君も見ている気がして寒いベランダでひとり、ずっと。ここから見た星々は欠片のようにか細いのに、光を越えて…

にんげん

誰かが「人間とは友達じゃありません」と言ったから一人の人間が傷ついてしまった。「どうやらあの子は人間じゃなかったみたいね、可哀想に」と誰かが自分のお優しさとやらに酔って一人の人間の心が砕けてしまった。人間はかんたんに人間を虐める。そんなこ…

ふたご座の秋

視界の端で、戯れのように彼女の髪が揺らぐ。最近染めたばかりだというその栗色は、どことなく、秋の始まりを知らせているような気がした。 「海へ行かない?」 宵が終わり煌々とした月の光が窓から射し込んで、満面の笑みでそう言った彼女を浮かび上がらせ…

胡蝶の夢

目が覚めたら私は十六歳で、白いシーツが敷かれた病院のベッドで白い布団に包まりながら寝転んでいて、十五センチしか開かない窓から射し込む陽射しを眺めているような気がする。朝を朝だと感じるまでにも時間を要して、それが判るころには起床時間のベルが…

僕は、君の王子さまになりたかったよ。

「私、本当は人魚なの」 彼女は、そう言って鼻で笑った。自分で言ったことなのに、鼻で笑った。僕も僕で、また随分と理解し難いことを言っているなと思ったが、その日彼女は、灼熱のコンクリートをサンダルを持って裸足で歩いていたので、強ちそうでも無いの…

「悪夢を見た、ただ、それだけの話さ。」

こういう形の文章を書くのは随分と久しぶりだと思う。完全な日記に似た文章は。最近は自分の感情の波が荒立っても、こうして長文を書くというよりはちょっとした小説に似た文章の中に落とし込むことが多かった。この場合の荒立つというのは何も怒りというわ…

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