Short Sentence5⃣
何度目かの"自分らしさ"を見失った夜。投げた肢体はシーツの上にちらばって、遠く伸びた指先は霞み、ぼやけていた。雨は止んでしまって、鬱気は更ける闇夜の中へ溶けていく。鈍感になる事だけが得意だった。けれどそれは、鋭敏なことときっと同義で。知っているから知らない振り。"自分らしさ"なんて、最初から無かったんだよね。わかってる、わかってるわかってる。わかってるよ。君が望むわたしで居られればいいよ。そのうちにほら、もうぜんぶ、わからないからさ。刺さる棘は抜いて、血溜まりは影にして、微笑ってあげるよ、きみの為に。