Short Sentence7⃣
最終列車は遠く闇に呑まれて、置き去りのこころがひとつ、哭いていた。白々しい蛍光灯の光は責めるようにそれを見下ろして、生温い風は憐憫の情を持って頬を撫でてゆく。幾度となく刃物で切り裂いた腕は、ぼろぼろのこころを具現化したような醜悪を纏ってじくじくと疼いた。何も無いところへ行きたかった。誰も知らないところへ行きたかった。けれどどうしても、どうしても逝けそうになかった。白線の外側で掻き抱いた身体は、未だ小刻みに震えている。寄り添ってくれる人は、もう、何処にも居なかった。