Soliloquy box

松葉が纏まりのない文章を溢すだけの箱

Short Sentence1⃣1⃣

 「誰かをそっと見守っていられるような、月とか、星とか……そういう存在になりたいんです」

 君はそう言って僕の胸を刺していった。夏の暑さを凌ぐために入った、家電量販店でのことだった。

 刃のように鋭い三日月に心を刺されてしまったから、いっそ星に成れたなら良かった。それなら君も、僕を見初めてくれたかもしれないのに。けれど、それがわからないままなら、そんなものは無いのと同じだ。それなら、もう、何だって良いだろう?

 僕は、どうしたって君の隣に居たかった。君の総てで在りたいと、そう思ってしまった。だからさ、きみが僕に刺した刃を、僕も刺してあげるよ。簡単でしょう。人間はさ、こんな小さな刺し傷だって、致命傷に成るんだよ。こんな小さな傷だけで、君の最期は、僕で一杯に成るんだよ。

 誰かを救いたかった君と、君が欲しかった僕。僕が悪役になれば、君はいつまでもスターのままで居られるよ。ね、ほら、これで僕たちようやく、望み通りだね。

アイコン等は此方のサイトからお借りしております→ (http://www.nanos.jp/snb373/)