Soliloquy box

松葉が纏まりのない文章を溢すだけの箱

2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

Short Sentence8⃣

月が満ちた。まだ、きみは戻らない。 淡い光の下で撫でた頬の丸みも、少し高めの平熱がくれた温もりも、掌をすり抜ける風のように、闇へ溶けて消えてしまった。きみが与えてくれたすべてが、きみがいない間に重ねた夜へ溶けて、その残滓すら、跡形もなく消え…

Short Sentence7⃣

最終列車は遠く闇に呑まれて、置き去りのこころがひとつ、哭いていた。白々しい蛍光灯の光は責めるようにそれを見下ろして、生温い風は憐憫の情を持って頬を撫でてゆく。幾度となく刃物で切り裂いた腕は、ぼろぼろのこころを具現化したような醜悪を纏ってじ…

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