Soliloquy box

松葉が纏まりのない文章を溢すだけの箱

Short Sentence4⃣

 踵を上げて背伸びをして、それでも空を飛べやしないから、わたし、鳥が好き。先行く腕を引くだけで、君はいつも立ち止まって振り返って、微笑んでくれた。それからどちらかの部屋に転がり込むのがお決まりだった。最初にキスをせがむのはいつだって君で。そんな倖せが続くことを夢想していたの、ずっと。恋人ごっこはもう辞めよう、なんてさ、始めたのはわたしなんだから、勝手に決めないでほしかった。それなら、初めから君なんて居なかったことにしてほしいよ。君との想い出はもうわたしの中に住み着いてしまって、これが恋なのだと今も囁き続けている。ねえ、君の内側にいるわたしは何になるの? 終わったものが恋でなくなってしまうなら、最初からそんなもの必要ないことにしておきたかった。わたしね、空を飛べないの。君だって同じでしょう。それなら、どうしてこの気持ちは同じに成れないの。同じところは幾つだって見つけられる筈なのに、ひとつの違うところで全部が有耶無耶になってしまった。酩酊した幸福感で不幸が浮き彫りになる。声が震えても、もう温もりはやって来ない。寄り添ってはくれない。人生がゲームだったらよかった。それならわたし、絶対にセーブポイントから動かないのに。上書き保存されてしまった関係は、戻ることも、デリートすることすらも叶わない。君が居なくなって戻って来たひとりぼっちの生活が、君と過ごした日々を消していく。消えていく。わたし、来世は鳥になろうと思う。同じところが少なければきっと、こんな結末は来ないから。だから、覚えておいて。わたし、鳥が好き。

 

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